相続放棄しても大丈夫?遺品整理の前に確認しておくべきことを解説
最終更新日:2025.06.30

遺品整理において気になるのが「相続放棄」ですよね。
相続放棄は、故人の遺した財産が負債を上回る場合に選択される手段です。この手続きにより、相続人は故人の権利・義務を一切受け継がないことになります。相続放棄には手続きの期限やさまざまなルールがあり、把握しないまま遺品整理を行うとトラブルにつながることも・・・。
この記事では相続放棄に関して、法的な規則や確認しておくべきことを解説します。

こんにちは。おうち整理士の榛田(はりた)です。今回は、相続放棄のルールや遺品整理との関係性について詳しくご紹介します。
目次
相続放棄とは何か?
相続放棄とは、相続人が故人の資産や負債を引き継がないことを指します。相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申請する必要があり、被相続人が残した負債(借金など)が多かったり、被相続人との関係が悪かった場合に選ばれることがあります。
相続放棄を選択することで、被相続人の一切の権利義務を放棄することになるだけでなく、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
単純承認とは
単純承認とは、相続人が相続財産を条件なく受け入れることを意味します。これは被相続人の資産だけでなく負債もすべて引き継ぐことを指します。相続放棄には様々な手続きが伴いますが、単純承認に特別な手続きはありません。
法定単純承認にみなされてしまう行為
相続放棄後でも、特定の行為を行うと法定単純承認にみなされる可能性があります。
例えば、故人の預貯金を一部引き出したり、故人の財産を処分したりすることが挙げられます。こうした行為は、相続放棄の意思を無効にする恐れが高まるため、注意が必要です。また、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に意思表示しない場合も単純相続とみなされるのでご注意ください。
意図せず、相続財産の一部でも受け取ってしまうと、相続を承認したと見なされかねないため、十分な確認を怠らないよう心掛けたいところです。
限定承認とは
限定承認は、遺産の範囲内でのみ負債を支払うことを条件とする手続きです。遺産がプラスの財産の場合、その分を受け取り、マイナスの財産に対しては責任を負わないことになります。このため、相続放棄と単純承認の中間に位置づけられる選択肢として活用されます。
しかし、この手続きも所定の期限内に行わなければ即失効となり、通常の相続手続きに移行してしまいます。また相続人全員の同意が必要であったり、家庭裁判所への手続きが必要だったりと、他の方法に比べ手間がかかる点にもご留意ください。
相続放棄後に注意すべきこと
相続放棄後には、様々な注意点があります。後々のトラブルを避けるために、事前に確認しておきましょう。
被相続人の預貯金の引き出しや解約、名義変更
民法921条第1項によると、相続人が相続財産の全部又は一部を処分すると法定単純承認となります。そのため、相続放棄を検討中・実行後に、故人名義の預貯金を引き出したり解約、名義変更すると「処分した」とみなされ、相続したと判断されるリスクがあります。たとえ口座凍結前に引き出しても、そのお金は故人の財産と明確に分けて管理し、使わないように注意が必要です。財産の隠匿も単純承認に該当します。
借金・税金・入院費の支払い
故人の借金や税金、入院費などを相続財産から支払うのは処分行為に該当する可能性があり、相続放棄が無効となる恐れがあります。どうしても支払う必要がある場合は、相続人自身の資金を使い、相続財産は一切手を触れないようにしてください。
賃貸物件の解約
故人が賃貸物件に住んでいた場合の解約手続きも処分行為に当たる可能性があります。契約の解除自体が相続財産(賃借権)の処分と見なされ、単純承認とされる恐れがあるため、自ら判断せず大家や管理会社からの一方的な解約依頼を待つのが無難です。
実家の解体や売却
空き家の解体や不動産の売却も「処分行為」に該当します。価値維持・管理のための軽微な保存行為(塀の補修など)は財産の価値の保存につながり、他の相続人にとってもメリットがあるため許容されますが、建物撤去や売却など手放す行為を行うと相続を認めたとみなされるため厳禁です。
遺品整理
家具、家電、パソコン、車など故人の遺品を勝手に整理・処分すると、相続財産を処分したとされ、相続放棄が無効になる可能性があります。資産価値がないと客観的に説明できる場合は例外ですが、処分を希望する場合には事前に弁護士と相談したり、査定の資料を残したりするのが安全です。相続財産に車が含まれる場合は、廃車の取り扱いに強い業者も視野に入れておきましょう。
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携帯電話契約の解約
故人名義の携帯電話を解約する行為も財産の処分とみなされることがあります。契約解約を急ぐと、相続放棄の意思が無いと判断される恐れがあるため、やむを得ない場合以外は解約せず、専門家に相談のうえ対応してください。
特に価値のある品に関しては、更なる問題を引き起こす可能性があるので、専門の業者への相談や適切な手続きを経ることが大切です。後々の感情的な負担を軽減するためにも、冷静に行動しましょう。事前にしっかりと情報を整理し、適切な対応を心がけることが、トラブル回避につながります。
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相続放棄をしても遺品整理は必要?
相続放棄を選択すると、相続人は被相続人の一切の権利義務を承継しなくなるため、遺品整理が必要になるケースは一般的にありません。ただし、現に占有している相続財産については、相続財産清算人や他の相続人に引き渡すまで適切に管理する必要があるため注意が必要です(民法940条第1項)。
遺品整理業者に依頼する際のポイント
遺品整理を業者に依頼する際には、いくつかの重要なポイントがあります。ひとつずつ確認していきましょう。
遺品整理の費用について
遺品整理の費用については、業者によって異なる場合があるため、十分な確認が必要です。一般的には、物量や作業内容、処分する物の種類によって費用が変動します。具体的な価格設定には、トラックのサイズや運搬の距離も考慮されるため、見積もりを取る際には詳細に記載してもらうことが望ましいです。
費用については、パッケージ料金を設定している業者もあれば、個別の料金体系を持っている業者もあります。できるだけ複数の業者から見積もりを取得し、比較することで、適正な料金を把握することが重要です。適切な遺産整理を行い、それに見合った費用を支払うことは、後々の満足度にもつながります。
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遺品整理を業者に頼むメリットとデメリット
遺品整理を業者に依頼するメリットは、業者の迅速で専門的なサービスが受けられる点です。ノウハウのあるスタッフが効率良く処分を進めてくれます。
一方で、デメリットも存在します。業者に依頼する際の費用が発生し、時には予想以上に高額になることもあります。また、業者によっては信頼性が低い場合もあります。したがって、十分なリサーチを行い、信頼できる業者を選ぶことが重要です。選ぶ際には、予算とサービス内容をしっかり比較検討しましょう。
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まとめ
相続放棄や遺品整理においては、様々な要素が絡み合い、特に感情面でも複雑な関係性が生じることがあります。細心の注意を払いつつ行動しましょう。
遺品整理に関連する業務であっても、個々の状況によって異なる側面がありますので、事前にしっかりとした計画を立てることが大切です。専門家のアドバイスを受けながら、自身の意向や関係性を適切に反映させた対応を検討することが肝心です。
相続に関する法律や手続きについても理解を深めることで、トラブルを未然に防ぎましょう。
これまでにおうち整理士で700件以上の遺品整理を担当。特殊清掃、リフォーム、骨董品買取など幅広い経験を重ねた上で知識を取得し、お客様に寄り添った仕事をモットーとしている。一般社団法人 遺品整理士認定協会「遺品整理士」を所持。